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その伝承

 知見、様々なこと、ものに対する評価の中で、経験的知見、数値的知見では数値上の知見は確かに、現代科学が一理ある部分がありますが、それを上回る経験的知見は別格です。

 酒造りに切っても切れない井戸の伏流水、今日の井戸の掘削は科学技術を駆使して、莫大な費用で掘削していますが、嘗ては、井戸の職人さんが土壌の表層、植生等から井戸を見事に掘り当てていたそうです。掘削した井戸の水質も、表層の土壌から、水質が判断できたそうで、正に、神業かも知れません。今日は土壌分析を行なって、やっとその素性が判断でき、その関連性を見出すまでに長い時間を要し、その関連性が見えて来なかったりする事もある様です。

 文化財、重要文化財、当然、「もの」がその対象ですが、その文化財を生み出してきた作者そのものの存在なしに語れないのは当然です。その作者、或いは、文化財、重要文化財を受け継いで、守ってきたご当家の当主の力量、価値観、哲学、思想、歴史、倫理観、行動が背景にあってこそ初めて、その継承、存続が可能であることは論を待たないと思います。ご当主自信が無形の文化財、重要文化財以上のものを継承、更には醸成して、内在しているからこそできるものです。

 酒造りも正に、同様です。今日までの歴史的経験的知見の積み重ねがとても重要だと思います。お客様に召し上がって頂く飲料ならではの長期的スパンでの安全性、健康を含めた前段があっての酒造りが希求されるところでもあります。

 弊社の生酛造りは代々継承してきた生酛造りの深掘りを命題として酒造りを行ってきました。謂わば、生酛の本流としての酒造りを継承することがとても大切だと言う代々の言い伝えの下、弊社のにごり酒と共に、多様性ではなく、その深淵なる伝統の教えの意味するものを代々の当主が研鑽して参りました。

 無形の口伝の意味する深さ、重さがあります。口伝には数値以上の数値以上の意味と重要性が内在しています。その発露が日本酒を始めとする日本の様々な文化だと思います。日々昇華できる様に努めて参ります。

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